保護者の方へ
「3Dは、何歳から見せてよいのか?」
しばしば3Dの専門家は、このようなご質問を受けることがあります。

そうした疑問を少しでも解消していただくためにも、本トピックでは、アメリカの教育現場で子どもたちに3Dを視聴させるときに指導されている、ガイドラインの内容をご紹介します。

また、子どもたちが3Dを視聴することによるメリットについても紹介していきます。
野田 徹 先生
国立病院機構東京医療センター 眼科医長
東京医療保健大学 大学院看護学研究科 臨床教授

映像技術は私達の日常生活に広く利用されています。テレビやビデオ以外にも、デジタルカメラやスマートフォンで驚くほどきれいな映像が撮影でき、すぐにインターネットなどで供覧できる時代になりました。
 さて、もともと私たちは周りの世界を、カラー立体映像として見ています。その映像を撮影する技術は白黒写真から始まり、動きが加わってテレビ画面、色彩が加わってカラー画面となり、その画質はハイビジョンからさらに高画質となる計画が進められています。3D映像技術は、その画面を立体空間へと広げるもので、それにより観察される映像はより現実に近いものとなります。つまり、これらの技術の進化の流れは、映像がより自然の世界に近づく流れと言うこともできます。
 ところで、視覚認識は人それぞれで異なります。例えば、色覚に関しては、特定の色の識別力が弱い人がいますので、公共的表示物においては、その微妙な色の識別が、重要な判断に必要とならないよう配慮されるべきです。3D映像に関しても同様に、両眼視機能が弱い人がいますので、3D映像は、あくまでより自然に近い表現方法として活用されるべきであり、その認識が弱いことで不必要なハンディキャップなどが生じないような配慮も必要と思われます。
医学的には、両眼で立体視ができる機能は、生後3~4ヶ月頃から備わり、個人差はありますが、だいたい5~6歳頃までに、成人同等に発達するといわれています。

3Dは、適切な見方をすれば、決して危ないものではありませんが、心身が成長過程にあるお子様に3Dを見せるときには、保護者の方の関わりが必要な場面があります。
お子様に3Dを見せるとき、保護者の方は、お子様の立体視機能の発達段階や、目の疲れなどの身体への影響に配慮した上で、お子様に3Dを見せてよいかの判断をしたり、視聴時間の制限をするなどの工夫をしていただくことが望ましいといえます。

特に、幼いお子様に3Dを視聴させるときには、保護者の方が管理できるところで、お子様の様子を見ながら、ご家族で一緒に3Dを楽しむというスタイルが望ましいといえます。

保護者の方が安心できる環境でお子様に3Dを視聴させることで、3Dは、お子様にとって、ワクワクするような楽しい体験ができるものになるでしょう。
また、3Dは、立体的に見えるという利点をいかした教育的な効果が期待できる場合もあり、教育的な面でも、お子様の成長を支援するものになる可能性があります。

保護者のみなさまには、3Dのメリットや楽しさを知っていただいた上で、お子様に3Dをお見せになる際には、適切な3D視聴の環境に配慮しながら、お子様と一緒に3Dを楽しんでいただければと願っています。
3D技術の品質向上と低コスト化によって、3Dは、教育現場へも導入されはじめています。
3Dの普及に伴い、国内外の関連機関・団体などが、安全かつ快適に3Dを利活用するためのガイドラインを策定しています。

ここでは、アメリカ検眼協会(American Optometric Association)の監修による、教室での3D視聴におけるガイドラインをご紹介します。
ご家庭でお子様に3Dを見せる際にも応用できる情報として、ぜひ参考になさってください。
  1. 子どもたちに3Dを視聴させるとき、教師は子どもたちに対して、3Dはどのように知覚されるもので、どんな風に見えるのかについて、を説明したほうがよい。

  2. 3Dの見え方には個人差があり、人によっては立体的に見えない場合もあることや、その理由についても説明したほうがよい。

  3. 指導者や保護者は、子どもたちが室内で 3D視聴を視聴するために最適な環境を整備する必要がある。また、3Dを視聴することにより、子どもたちの身体に悪い影響を与えないようにするために、子どもたち自身が注意すべきことについて、子どもたちにも分かるように説明しておく必要がある。

  4. 子どもたちに3Dを見せたときに、ある子どもについて、想定したような立体的な見え方ができていないのではないかと思われる様子が見られた場合、その子どもは、立体視に問題がある可能性がある。学校で子どもたちに3Dを見せるときには、このような機会を通して、立体視に問題があった場合には、問題に気づくことができること、また、眼科的な観点からも同様の方法による検査が有効であることも、あわせて説明するとよい。
上記のガイドラインの中でも触れられているように、学校や家庭で、子どもたちに3Dを視聴させることは、立体視機能に問題がある生徒の、早期発見のきっかけになる場合があります。

子ども自身や保護者らが、立体視に問題があることに早い段階で気付けるかどうかは、その子どものその後の人生にも影響する可能性があります。

立体視に何らかの問題がある子どもは、一定数いるといわれています。

特に大きな不都合もなく生活している人もいますが、自身の立体視に不具合があることに気づかないまま、苦労している人もいるようです。

もし早い段階で、立体視に不具合があることが分かっていれば、家庭や学校での3D視聴の際にも適切な対処を行うことができます。

子どもに適切な方法で3Dを視聴させることは、その子どもの立体視に問題がないかを確認する機会にもなるのです。